[ 神原通信 ]

2024年10月11日(金

<『Hitsville : The Making of Motown』>

久しぶりに音楽ドキュメントで面白いのに出会った。
日本では2020年に公開となったドキュメンタリー映画『メイキング・オブ・モータウン』がAmazonプライムビデオで観ることが出来た。

モータウン

【モータウン】は、
アメリカ合衆国ミシガン州デトロイト発祥のレコードレーベルで、1959年ベリー・ゴーディ・ジュニアによってタムラ・レコードとして設立し、1960年モータウン・レコード・コーポレーションとなった。レーベル名は自動車産業で知られるデトロイトの通称「Motor town」の略。

モータウンの曲を意識しだしたのは、1964年にヒットした「シュープリームス(スプリームス)/愛はどこへ行ったの」からでした。この曲はグループにとって初めてのナンバーワン・シングルに輝いた。でも、僕はこの曲が嫌いだった。

僕はこの年、10歳だったから小学6年生かな。毎週日曜日、ラジオの「ビルボードホット100」のアメリカの音楽情報番組を聴くのが楽しみだった。この頃の僕は「ビートルズ一辺倒」で、ヒットチャートの1位にビートルズが登り詰めるのを楽しみにしてたんだけど、なぜか1位はスプリームスだったんですよね。「来週は絶対ビートルズが1位になるはず」と思いながら聴いてたんだけどやっぱり2位。もう毎週イライラで、その頃から「モータウンの曲は嫌い」になってしまったのです。

以後、モータウンには、フォートップス、ミラクルズ、テンプテーションズ、スティービー・ワンダー、ジャクソン5とか超有名なアーティストがたくさん出てヒット曲もたくさんあったけど、スプリームス以来、どうしても好きになれずにいた自分がいましあ。興味はあったんですよね。好きになれない自分にも不満があったし。

それが、70歳を越えた今年、やっとこのドキュメントを観て(かつての)モータウンが好きになったのです。
それぐらい、この映画は面白かった。

創始者のベリー・ゴーディ・ジュニアとスモーキー・ロビンソンが初期のモータウンを語るところから始まり、いかにして成功の道を歩んで来たかというのを説明してくれるんだけど、この二人の会話がまず楽しい。かつて活躍したアーティストの昔のビデオも楽しい。ノリがいい。
そして、後半、この映画のハイライトとしてマーヴィン・ゲイが出て来る。

いかなる経緯で「ホワッツ・ゴー・イン・オン」ができたかを映画は説明してくれるんだけど、この曲の解説が一番感動的で、いままで聞き流して来たこの曲が圧倒的迫力で僕の心に響いて来たんです。名曲です。

この映画を観た後に、下記のページを見れば、もう一度この映画を観てみたくなるはず。

映画『メイキング・オブ・モータウン』レビュー:4つの視点で見るヒットの作り方

<おまけ>

MARTHA and THE VANDELLAS / a love like yours

Commodores - Brickhouse (Live)

Martha Reeves & The Vandellas 〜 Heat Wave (1963)

WHAT'S GOING ON - Marvin Gaye (1971) 和訳

Marvin Gaye "What's Going On / What's Happening Brother"

 

 

2024年10月3日(木

<映画のスクリーンサイズ>

僕がなぜ 今ブルーレイで昔の映画を観直しているのか?

まずは、「昔、初めて映画を観た頃の感動を再度味わってみたい」というのがあります。

田舎の中学では成績がよかったのに、町中の高校(進学校)に入学したとたん、あまりの学力差に愕然とし、1年も経たないうちに落ちこぼれた高校生にとって、場末の2番館は、僕にとっては格好の逃げ場所でした。

そこは場末にふさわしく町のメイン通りの裏にあったし、かなり古びていて、3本だて200円のチケットを買って、もぎりのおばあちゃんに渡して半券をもらい、休憩も含めて5〜6時間は暗い館内にずっと座っていられるのです。現実を忘れて。観る映画は何でもよかった。フランスの恋愛物からドラキュラまでなんでも。

特にハリウッド映画は「玉手箱」でした。アクション、ミステリー、ファンタジー、コメディ、ドラマ。明るい映画もあれば暗い映画もある。お金をかけた映画もあれば、安っぽい映画もある。中には人生の何たるかを教えてくれる映画もありました。感動で涙した映画もあります。

大学で大阪に出て来てからも、2本だて300円の上映会や5本だてのオールナイトがあり、毎月最低でも20本は観られる環境ではありました。ただ、映画を見続けていると最終的には本数は減ってきます。好みが出来て来るからですね。段々と減り続けて、1983年に結婚してからはほとんど観たい映画が無くなってしまい、映画館からは遠ざかってしまいました。

今、僕が手元に置いておきたいブルーレイは、1950年代〜1970年代に限られているのは、そのせいですね。それ以降の映画は面白いものがあっても、「思い入れ」が違うんです。

あの頃の映画が今すべて1,200円程度のブルーレイで手に入れば、僕なら片っ端から買ってしまうかもしれませんが、現実はうまくできています。

映画会社は、不特定多数に好まれる映画を選んで最初は2,500円〜5,000円ぐらいで売り、5年ぐらい経って残っていれば半額で売る。それを僕が買うわけです。中には売り切れて入手不可能な作品も出るから、僕は限られたものしか手に入らない。残念ではありますが、そのおかげで、それほど散財しなくていいのである意味助かっています。

さて、次に、なぜブルーレイなのか?というと、DVD盤では、その映画が公開された当時のスクリーン・サイズで収録されていることがほとんどなくて、左右や天地が切れていたりするからですね。ブルーレイにはそういうところが改善されていて、画質にこだわるなら画面のサイズにもこだわる、その気持ちがうれしい。

では、その映画のサイズについて少し説明します。

スクリーンサイズ

アスペクト比というのは、画面比率のことで、映像(映画、テレビ、動画)などにおける縦横比のことをいいます。

上図の緑の枠が4:3の画面で、古い映画やブラウン管テレビはこのサイズを基準に作られていて、これを「スタンダードサイズ」といいます。(4 : 3を計算し直すと 1.33 : 1になります。)

スタンダード これがスタンダード・サイズ

映画はこのサイズが見やすい気がしますね。

では、なぜ横長のワイドなスクリーン・サイズが必要になったのかというと、テレビが登場したことによって、映画館に足を向ける人が少なくなったのが原因です。

「1946年に30局だったアメリカのテレビ局は、5年後には100局以上に増えていた。1947年には、9000万人が週2日以上、映画館に行ったが、そのわずか4年後には5400万人が週1日行くだけになり、映画の観客数は激減した。」

というのです。
そこで映画スタジオは考えたわけです。テレビではできないことをしよう、と。そのため、映像の迫力を出すため映画のワイド化というのを考えました。

それが「シネラマ」です。これは、27mmレンズのカメラ3台で撮った映像をパーフォレーション(送り穴)6個分の高さの35ミリフィルムに記録していく。アスペクト比は2.59。これを上映するにも3台の映写機が必要で、特殊なスクリーンの劇場を用意しないと観られない。

次に考えだしたのが「シネマスコープ」で、アスペクト比は2.35:1(12:5)。上の図の青の枠がそれです。

シネマスコープ 縦に比べて横は2.35倍とかなり横長ですね。

これは、フィルムは今まで通りの35ミリフィルムを使い、特殊なレンズを使用して左右を圧縮してフィルムに記録し、上映時には左右を復元して横長の画像を得る方法でした。
しかし、大きくなったスクリーンにこれを投影すると、画質の粗さが目立ってしまった。

じゃあ、画質を良くして画面を横長のワイドにしようと考えだされたのが、「ビスタビジョンサイズ」(上図の赤の枠)で、アスペクト比は1.85 : 1。スタンダードとシネマスコープの中間ですね。これは、35ミリフィルムは通常のカメラでは、上下に流して撮影するんだけど、これを左右に流して撮影し、上映するときは、これを上下に流すフィルムに焼き付けるので、粒子が細かくなって画質が良くなるという仕組み。(分かりにくいけど)
これが「ビスタサイズ」というもので、現在アメリカではこのサイズが一般化しています。

ビスタ

これがビスタサイズ

映画館で観てる感じですね。

さらに、アメリカ人はすごい。ブロードウェイのプロデューサーのマイク・トッドは、アメリカン・オプティカル社と共同で70mmフィルムのフォーマット「Todd AO」を開発したのです。
その狙いは、「シネラマ」の迫力映像をカメラたった1台、映写機1台で再現すること。アスペクト比は2.20となった。

さらに開発は進み、パナビジョン(Panavision)が登場。

「MGM 65」で、70mmフィルムであの映画『ベン・ハー(Ben Hur)』の戦車競走シーンを撮った。アスペクト比は超ワイドの2.76。このシーンだけでも、この映画を観る価値があります。

ベンハー

ネットではこれしかなかったので参考までに。
この画像は4 : 3ですが、これが2.76 :1になってるんです。これが大スクリーンに映し出されたらすごい迫力です。

僕が実際に映画館で観たのは高校生でしたが、大迫力でした。

これ、背景の上半分は絵ですが、全景の像は実物大で作っています。

今回はここまで。

 

 

2024年10月2日(水

<『AND I LOVE HER / SANT0 & JOHNNY』>

アンドアイラブハー

AND I LOVE HER / SANT0 & JOHNNY

ビートルズの曲はほとんど聴かなくなった。1960年代末、ジョンとポールのいがみ合いが激しくなって、1970年に解散した。ショックだった。あんなに好きだった彼らの曲もだんだんと聴かなくなった。というか聴けなくなった。ジョンとポールが、お互いの曲をけなすのだから、聴いていられるわけが無かった。

先月、Apple Musicからお薦めで「ザ・ビートルズ・グレイティスト・ヒッツ / SANTO & JOHNNY」が出ていたので聴いてみたら、この曲だけ心に響いた。

アレンジは古くさいけど、スティール・ギターの独特の演奏に色気を感じたなぁ。

 

 

2024年10月1日(火

<『ゴッドファーザー』4K Ultra HD+ブルーレイ>

ゴッドファーザー

ブルーレイ画質★★★★★

「傑作の誕生から半世紀を記念し、『ゴッドファーザー』全3作が待望の4K UHD化。フランシス・フォード・コッポラ監督による完全監修のもと、徹底的な修復が施された原版を使用し、ブルーレイもリマスター。」
という商品説明を見て、第1作目だけだけど¥2,721で購入。 
ブルーレイだけのものも¥1,200であるけど、「待望の4K UHD化」&リマスターという言葉に釣られてしまった。
たぶんどっちでもよかったんだろうけど、将来「4K UHD」のプレイヤーを買えば、もっといい画質で見られると思うと、なんだか得をした気分になれる。

で、観た感想はというと、「何回見てもゴードン・ウィリスの撮影はすごい!」。

ゴードン

「オープニングシーンから当時としては画期的であった陰影に満ちた照明(ヴィトー・コルレオーネに扮するマーロン・ブランドの目が、影に隠れ見えない)と琥珀色のトーンに満ちたノスタルジックな色彩、絵画のように構成された画面など、素晴らしい映像手腕を発揮し、映画界に衝撃を与えた。」(Wikipedia)

当時としては低予算映画だったそうで、一部の撮影は第二班に任せたそうだけど、格調高い映像は何度観ても素晴らしい。

もうひとつ素晴らしいのは、フランシス・フォード・コッポラの解説が聞けるのだ。「映画ファンは裏話が好き」なんだけど、僕も例に漏れず、だからDVDやブルーレイを買うというのもある。もし買ったブルーレイディスクに特典が何もなければ、YouTubeの町山さんの映画講座を聴いたりして喜んでいる。

解説を聞いて、Wikipediaを読んで何回でもこの映画を楽しめる。
「企画の発足」「監督の選出」「コッポラとパラマウント(スタジオ)の衝突」「脚本の製作」「マフィアの関与」「キャスティング」「撮影」などが語られる。

公開されたのは、日本では1972年7月で僕はまだ高校生だったから、実際に観たのは1974年頃だと思う。その頃には、もうすでに評価の高い作品になっていたし、コッポラも期待の監督としてよく雑誌に登場していたし、僕の好きな映画の1本でもある。

面白かったのは「評価」のコーナー。
「コッポラ自身は、本作を製作中にヒット作『フレンチ・コネクション』 を鑑賞しており、その出来栄えを高く評価し、「同じマフィア映画でも、『ゴッドファーザー』は暗くて退屈で悲しい映画だ。男が座って会話する場面ばかりだ。『フレンチ・コネクション』のようにヒットすることはないだろう」と語っていたという。
その後「本作が成功したのは私の力ではない。多くの優秀なスタッフに恵まれたからだ」と謙虚なコメントを残している。 」(Wikipedia)

このブルーレイでも、解説で同じようなことをしゃべっている。

「映画では全ての要素が完璧に揃うことがある。本作は、キャストも素晴らしく、最高の作曲家による音楽、優秀なカメラマンに恵まれ、プロダクションデザイナーも衣装担当も有能で、原作本もすばらしい。
私の功績は何かと問われれば、”彼らを選んだ事”だね。(笑)」

偉大な映画が出来るのは、正に偶然なのかもしれない。時代背景、役者、監督、スタッフ、観客などが作り出すエネルギー。映画の面白いところはそこにある。


 


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