[ 神原通信 ]

2024年11月5日(火

<『旅情』>

旅情

ブルーレイ画質★★★☆☆

残念ながらあまりよくありませんね。DVDに使った原盤をそのままブルーレイにしたみたい。画面サイズはスタンダードサイズなんだけど、上下左右に黒マスクがしてあって、画面が一回り小さくなってる。ま、映画自体は★★★★★だし、値段も感謝祭価格の1,092円と破格だったので文句はいいません。4Kリマスターが出たらまた買います。

「旅情」

ブロードウェイでヒットしたアーサー・ローレンツの戯曲『カッコー鳥の時節』からデイヴィッド・リーンがヴェニスにロケーションして監督した。
脚色はデイヴィッド・リーンと小説家のH・E・ベイツが協力して行った。
テクニカラーの撮影はジャック・ヒルドヤード、音楽はアレッサンドロ・チコニーニ。
主演はキャサリン・ヘップバーンで、ロッサノ・ブラッツィが共演。

1955年製作/100分/イギリス
原題:Summertime

アメリカの地方都市で秘書をしていた三十八歳のジェイン・ハドスン(キャサリン・ヘップバーン)は、ヨーロッパ見物の夢を実現し、ヴェニスまでやって来た。ここで一人の男性と出会うというラブストーリー。何回も観ているから結末は分かっているんだけど、何回も観てしまう。

さて、この映画は「テクニカラー」で撮影されています。このテクニカラーとはどういうものなのか、調べてみたら結構面白い情報が入手できました。


【テクニカラー】

カラー映画の彩色技術を開発した会社名、またはその彩色技術の通称である。
フィルムの現像、プリント、テレシネなど、ポストプロダクション(撮影後の処理)を行っている。
1916年にアメリカ合衆国で起業し、その後数十年にわたり進化を続けたが、同社で処理された映画作品は、クレジットでCOLOR BY TECHNICOLORと表示され、テクニカラー作品などと呼ばれることが多い。

旅情

 

 

 

 

 

 

 

 

 


タイトルの下に「Color by Technicolor」の文字がありますね。

 

さて、その「テクニカラー」の色彩技術とはどういうものかというと、

【ダイ・トランスファー方式】

今では一般的にカラーネガフィルムを使って撮影して現像後、編集してポジフィルムに転写して上映するのですが、テクニカラーはカメラを通した映像をプリズムで光の三原色(赤、青、黄色)に色分解して3本の白黒ネガフィルムを作り出し、それを現像後、3色(マゼンタ、シアン、イエロー)に染めて(dye)、1本のポジフィルムに転写するという方法を取っています。当時感度が低かったカラーフィルム撮影に比べ、工程が複雑で時間もかかるが、確実な手法であった。

テクニカラー

下の写真がその特殊なカメラで、フィルムが3本かかってますね。

テクニカラーカメラ

このカメラで最初に撮影された映画は、ウォルト・ディズニーの短編映画『花と木』でした。

1932 Silly Symphony『 Flowers and Trees』

当時の映画で有名なものが『オズの魔法使い』で、これを観るとテクニカラーの鮮やかさが一目瞭然ですね。

「オズの魔法使い』

その後、カラーフィルムの感度が実用になるほど上がってくると、テクニカラーはコダックやアグファのカラーネガからダイ・トランスファー方式でプリントを起こす方法を発案した。1954年には大型のビスタビジョン、Todd-AO、ウルトラ・パナビジョン70、テクニラマなどからも高精細で美しいプリントを作成出来るようにした。

報道などでカラーフィルムの迅速なプリントが必要とされ、感度も上昇して来た1960年代半ば頃から、ダイ・トランスファー方式はアメリカでは採用されなくなり、1974年の『ゴッドファーザー PART II』を最後の作品とし、テクニカラー社はダイ・トランスファー方式のプリント施設を閉鎖した。


ただ、テクニカラー方式で撮影された映画は、そのネガ(3色)が残っていれば、近年の4Kリマスター作業で当時の色彩が復元しやすいと聞きます。
『旅情』も将来はもっと鮮やかな映像で観ることができるかもしれないと思うとワクワクします。

 

2024年11月2日(土

<アスペクト比の勉強・・その2>

最近、スクリーンサイズが気になってしかたがありません。しばらくお付き合いください。

YouTubeで探したスクリーンサイズの勉強サイトからの引用です。
代表的なものでも、下記のように7種類あります。

スクリーンサイズ

1.33 : 1(スタンダードサイズ)Original Silent Film
サイレント映画の時代からトーキーを経てテレビが普及するまでの間、このサイズが一般的でした。
テレビはこのフィルムサイズに合わせてブラウン管のサイズを考えたので、

1.37 : 1(アカデミー比率)Academy Racio
1932年に映画芸術科学アカデミーによって標準のフィルムアスペクト比として標準化されました。
最近の映画では、このサイズを復活させた映画があるようですね。
(『グランドブタペストホテル』では、過去の物語シーンがこれです。)

2.59 : 1(シネラマ)Cinerama
テレビの普及により映画館へ足を運ぶ人が減り、危機感を憶えた制作会社が考えたのがこのサイズ。
最初はカメラ3台で撮影して、映写機3台でスクリーンに投影したが、劇場が限られるため廃れた。

2.35 : 1(シネマスコープ)Cinema Scope
シネラマに変る方法として、通常の35ミリフィルムカメラに特殊なレンズ(左右を圧縮する)を取り付けて撮影、その後、映写時に元のサイズに戻す方法に切り替えた。が、画像が粗くなるため普及はしなかった。

1.85 : 1(ビスタビジョン)VistaVision
パラマウント(製作会社)が考えたワイド画面で、通常の撮影では35ミリ幅のフィルムを縦に流して撮影するんだけど、ビスタビジョンは横に寝かせて流す方法を考案。フィルムの面積が増えるのでシネラマより画質はアップ。これを映写用の35ミリフィルムに転写して上映。現在アメリカではこのサイズが一般化しています。

ビスタ
スチルカメラのようにネガフィルムを横向きで撮影。その後縦向きのポジフィルムに転写。

ビスタカメラ これが初期のビスタビジョンカメラ。
どうやって撮影するんだろう?カートリッジが邪魔ですよね。

ビスタビジョンカメラをレンタルすると高価になるとして、スタンダードサイズで撮影して、公開時に、劇場側が上下をマスクして(隠して)ビスタサイズで上映するという安上がりな方法が取られたそうだ。映画館側でスクリーンの上下左右にカーテンが付けられ、スクリーンサイズに合わせてカーテンを移動させて上映が行われた。昔、映画館によって指定されたスクリーンサイズ通りに上映されず、必要以上に画面がカットされた映画を観た事がありますね。

ヒッチコックの『サイコ』はこうすることでビスタビジョンサイズで公開されましたが、フィルムはスタンダードサイズなので、一部の人には「『サイコ』はスタンダードサイズ」だと誤解されているらしい。

2.76(MGM65)
35ミリの倍の70ミリフィルムで撮影・上映する方法。「ベン・ハー」がこれですね。
映画館が限定されるので、通常の映画館では35ミリにリサイズされたものが使用されました。

2.20(トッドAO & スーパーパナビジョン70)Tod AO & Super Panavision70
これも正真正銘の70ミリフィルムで撮影されたもので「パットン大戦車軍団」のブルーレイ画質は最高です。



2024年11月1日(金

<『太陽がいっぱい』>

太陽がいっぱい

ブルーレイ画質★★★★★

最初、ピントが甘いように感じたけど、観ているうちに気にならなくなった。画質はいいですね。
4Kリマスターだし、フィルムのザラザラ感も少ないし、64年前の映画だという事を感じさせない画質でした。定価は6,000円強なんだけど、Amazonの感謝祭用に値引きしてあって、2,600円台で買えました。というか、こうなるのを待ってたんですけどね。

この映画のアスペクト比は1.66 : 1。これがヨーロッパのビスタサイズで、スタンダード(1.33 : 1)とアメリカンビスタ(1.85 : 1)の中間です。

僕はフランス映画は(肌に合わず)ほとんど観ないんですが、この映画は別格。
アラン・ドロン、マリー・ラフォレ、モーリス・ロネ他、出て来る俳優はすべていいです。
カメラのアンリ・ドカエ(ドカが正しいようです)もうまいし、音楽のニーノ・ロータは誰でも知ってる有名音楽家だし、ストーリーも、演技も、非の打ち所がない。

アラン・ドロンのラストの表情を観るために何回も観ているようなこの映画。今回のブルーレイにはおまけのDVDが付いていて、アラン・ドロンや当時のスタッフのインタビューで語られるこの映画の素晴らしさを聞けて、さらにこの映画が好きになりました。

「映画の原題は『Plein soleil(完全な太陽)』。 『太陽がいっぱい』という名邦題は、日本の配給会社にいた、現在映画評論家の秦早穂子が命名したという。 ニーノ・ロータによる音楽の美しい旋律、ラストカットの大どんでん返し、そして若きアラン・ドロンの魅力が、タイトルと分かちがたく結びついた。」

という説明も納得の映画です。

 

 

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