できるまで

第一章:カンテ以前

その15:ノーマン・ロックウェルの画集を買いに

ロックウェル

僕の運命を変えた喫茶店「カンテ・グランデ」と出会う前に、もう一店舗、僕の人生を少しだけ変えた喫茶店がありました。そのお店は、大阪梅田の東通り商店街を抜けた、扇町に通じる道すがらにあった「アップルハウス」という一軒家の喫茶店です。

 その頃、僕には古本屋巡りをするという趣味があって、休日になると、梅田の紀伊国屋書店から東通り商店街にあった古本屋を巡り、商店街を抜けて扇町を通過して天六にある古本屋まで歩いていました。距離にして2駅ぐらいはあったのかな、たぶん。暇な時代です。
 人通りの無い住宅街に洋館をこじんまりさせたような「アップルハウス」を見つけたのはお昼頃で、中に入ってビックリしました。(僕はびっくりすることによく出会う体質のようです。)
 店の真ん中に、丸い台があり、ドラムセットがど〜んと置いてあるのです。別にライブをするとかそういう置き方じゃなくて、飾りとして置いてある、そんな感じ。椅子とテーブルは、これまた洋風で少々デコラティブではありましたが、新しいものでした。
 席に着いて、メニューを見たら値段は普通なので、カフェオレを注文したんですが、出て来たのはコーヒー用の陶器のポットとミルクのポット、それを今で言うメイドカフェ風のウエイトレス(古い!)が僕の目の前でカップに注いでくれるわけです。信じられない光景でした。
 店内を見渡すと、入口近くの壁には本棚が設置してあって、多分、この店の主人の持ち物だと思うんですけど、漫画の単行本や小説や絵画集や洋書があって、閲覧自由な本棚になってました。おもむろに蔵書をチェックすると・・・かなりこだわりのある選書状況で、マニアックな漫画の単行本が並んでました。村野守美や永島信二とか。でも、一番興味を惹かれたのはマンガじゃなくて、でかくて重い「ノーマン・ロックウェル」の画集でした。本紙に直で印刷した絵もあるんですが、3分の1ぐらいは、別印刷をした絵をページに貼っていたりするのです。多分、紙質の違い(光沢のあるなし)で絵の再現性を狙ったのでしょう。大判だから絵に迫力があるし、どれもこれも描かれた人物が生き生きとしてるのが気に入りました。本格的な画集なんて持ってなかったから「こういう画集欲しいなあ」と思ってしまったんですね。
 「この本いくらぐらいするんだろう」と、お店を出た後に紀伊国屋書店の洋書コーナーに行って調べてみたら、何と20,000円以上!もする。とても買えない。だから、この本見たさに何度か「アップルハウス」へ行きましたが、やっぱり買う勇気は出ませんでした。 でも、「もしかしたら・・・アメリカの古本屋へ行ったら安く買えるかも。」

そんなバカバカしい発想が、時として人生を変えるのです。

 

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