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Question:(初出:「お茶のこととかのQ&A」2004年)

橋本さんからの質問。

「私の友だちが貧血気味で鉄分が足らないので『鉄観音』を飲んでいると言ったので、お茶に鉄分なんて入ってるの?と返したら、『だって、鉄って書いてあるじゃない』。これってどうなの?」





 Answer:

楽しすぎます、その話。(笑)

いくら「鉄」と書いていても鉄分とは関係ありません。

「鉄観音」はウーロン茶の品種のひとつ(鉄観音種)です。中国福建省と台湾で作られています。

お茶の葉を摘んで発酵させ、一定時間の後発酵を止めて揉んで乾燥させて作ります。発酵させないものは緑茶となりますから、茶の成分はほぼ緑茶と同じということですね。お茶に鉄分があるというのは、聞いたことがないです。茶葉を焙煎した後、見た目が鉄のように黒かっただけです。今は緑色になってきてますけど。


さて、「鉄観音」の由来には色々あります・・・

鉄観音

安渓(あんけい)の農夫が、芝刈りの際、目の前にふしぎな茶樹を見つけ、それが観音廟(かんのんびょう)のそばにあった岩の隙間で成長して茂り、観音の立像に見えたので掘り起こして家に移した。その葉を摘み発酵させて作った茶は鉄のように黒いので、鉄観音と名付けたという。(「茶の口福」より)

あるいは、

一本の茶の黄を見つけた男がその茶の葉を製茶したところ、輝くような香りを放つお茶になり、「観音岩で見つかった茶の木のお茶」として皇帝に献上すると、皇帝はその味に感動し、重く神々しい味のそのお茶に鉄観音の名を授けられた。(「中国名茶館」より)

しかし、現在の「安渓鉄観音」はそれほど黒くはなく(発酵度は低く)水色もオレンジ色に近い。


さて、安渓は中国福建省の南にあります。ウーロン茶の製法を台湾に伝えたのは安渓の人だと言われています。(1800年前後)
 台湾の木柵(もくさく)鉄観音が有名ですが、台湾の鉄観音は安渓にある鉄観音種の茶樹ではない茶樹を鉄観音の製茶法で作ります。つまり、茶樹が違うのに、同じ「鉄観音」の名前をつけているのです。

中国茶はややこしいです。(銘柄だけで探してもダメということです。)

ちなみに、カンテの鉄観音は福建省のもので、かなり発酵度は高めで黒い(茶色い)ですね。それほど高級というわけではないのですが、香ばしい香りが特徴で、ファンも多い。ホットよりもアイス・ウーロンにしたほうがおいしいと思う。(最近は台湾の烏龍茶の影響でだんだん発酵度が低くなって緑色に近くなっています。)






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