07・・・木柵鐵観音茶(木柵のカッコ良いお茶屋さんで購入)


 台湾のブランド茶の一つ、木柵(もくさく)鐵観音(てっかんのん)茶

木柵は台北からも比較的アクセスしやすい山岳地で、周辺にはお茶にまつわるプロモーションセンターや、茶畑などがある。これまで僕は特にお茶に興味があったわけではないので、ここに行くことはあまりなかったが、今回改めてクルマを走らせ行ってみることにした。台北から約45分で木柵の山岳地に着く。

↑木柵のある文山区と、台北の位置関係はこんな感じ。木柵の歩道にて。

事前にネットで調べた情報では、木柵にある政治大学近くに「張協興茶行」というカッコ良いお茶屋さんがあるという。これまでなんか怪しげなお茶ばかりを購入してきたので、少しくらいは良さ気なものを買ったほうが良いと思ってのことだ。

行ったのは日曜日。店内には近所のオジサンたちがただダベっていたりして、静かな時間が流れている。カッコ良い店構えの割に、お店のオバサンは売らんかな精神がなく、穏やかで良い感じの方。「木柵のお茶はありますか?」と尋ねると、オバサンはこの鐵観音茶の匂いをかがせてくれた。

↑木柵の「張協興茶行」の店構え。カッコ良い。

本来、試飲もしたいところだったが、その香りだけでなんとなく、一番ヒットのように思い、迷わず購入。半斤(300g)で、200元(800円)のお茶で、神原さんの分ももちろん購入した。


  【7のお茶を飲んでの神原の感想】

   ★★★★★★★★☆☆

今回も感想を述べる前に少し講釈をしておきます。(えへん)

台湾の烏龍茶には大きな流れが二つあり、一つは中国福建省の武夷山(ぶいさん)に自生していた烏龍種の苗を台湾に移植して品種改良していった流れと、もう一つは同じく福建省の安渓県から台湾に持ち込んだ鉄観音種の伝統的な製法の更なる進化の流れです。

前者は、凍頂山(とうちょうざん)に植えられ、品種改良と技術革新の末に後年「凍頂烏龍茶」として台湾烏龍茶の基本となり、高山茶へと続いています。

そして、後者は台北近郊の木柵の標高わずか300mのところに植えられ、「木柵鉄観音」として安渓の伝統的な製法を守り続けている烏龍茶なのです。
なので、茶葉を見てみると、凍頂烏龍茶および高山茶系の製法とは異なり、それほど丸まっていないのが特徴です。元来、烏龍茶という名前は「カラスのように黒く、龍の如くくねっている」ところから来ているのですからね。
味自体も、オーソドックスな昔ながらの烏龍茶で、香ばしい香りと適度なキリッとした渋みがあり、重厚な味わいがあります。

面白い事に、二つは、似通った製法を採りながらも目指しているところが異なっていたのですね。
以下の表はそれを分かりやすくまとめたつもりですが、どうでしょう。

烏龍茶の品種
青心烏龍種
安渓鉄観音種
原産地
福建省武夷(ぶい)山
福建省安渓(あんけい)
台湾で植えられた場所
凍頂山(とうちょうざん)
台北市木柵(もくさく)
標高
1,000m以上
300m
茶畑
どんどん標高が高くなっている
茶畑の減少(育てにくい)
製法
烏龍茶の製法を進化させた
伝統的な製法を守っている
味わい
清々しい味と香り
(低発酵、低焙煎)
重厚な味と香ばしい香り
(重発酵、重焙煎)
茶の色
透明感のある薄い黄色
黄金色〜琥珀色


松田さんが香りだけで「おいしそう」と思ったのには、こういう背景があるんですねえ。

しかし、僕が35年前に台湾の烏龍茶に衝撃を受けたのは、やはり「凍頂烏龍茶」の方なのです。それまでの烏龍茶にない青々とした日本茶のような味わいと、まるで増えるワカメのように膨らむ茶葉は、重厚で馴染みにくい大陸産の烏龍茶しか知らなかった僕の心を鷲掴みにしたのでした。

なので、この木柵鉄観音は、これはこれで「充分おいしい」のは分かっているですが、僕にはそれほど必要のないお茶なのです。このニュアンス、分かってもらえるでしょうかねぇ。

もちろん、人の好みは十人十色なので、この木柵烏龍茶が好きな人は絶対いますので、そういう人にふるまうために、このお茶は大事にしまっておくつもりです。それに、この鉄観音種は育てるのが難しいらしいので将来もう飲めなくなるかもしれない、という情報もあり、今のうちに友達に飲ませておくのが「僕の役目」なのかもしれません。


【7のお茶を飲んでの松田の感想】

★★★★★★★★☆☆

鐵観音茶の概念は、神原さんの解説に委ねたいが、もう単純に美味しい。香りが良いのはもちろんだが、口に含んだ後、口の中に甘い風合いが漂う感じで、今まで台湾人の方からいただいたお茶の中で、「美味しい」と思ったものに似ている。今度から、台湾に来たら、このお茶を買うようにしたい。









まつだ・よしひと●1971年・東京生まれ。編集者、ライター、デザイナー。ハタチの頃、トータス松本氏に神原さんを紹介してもらって以来、神原さんに影響を受けながら、何かの折につけアレコレお願いをし今日に至る。著書に「台湾迷路案内〜ガイドブックにあんまり載らない台湾ディープスポット80〜」(オークラ出版)、「らくらく台湾一周旅行」(白夜書房)がある。共著に「日本人_天必_的24小時生活日語」「日語旅遊會話:聽&_自由自在」(ともに台湾・笛藤出版)がある。編集プロダクション・deco(deco-tokyo.com)代表。



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