カンテ写真部

その15

photo & text : kanbara



< インド バラナシ ガート付近1990>

ガートとは川岸に設置された階段のこと。テレビでよく出てくるからみんな知ってると思う。
洗濯場のほか、巡礼者の沐浴の場として用いられる場所で、ベナレス(今はバラナシというのが正解なんだけど、どうしても昔の言い方「ベナレス」の方がいいやすい)で一番有名なのは「ダシャーシュヴァメーダ・ガート」。この少年もこの近くで撮りました。

何とも言えず妖艶な感じがしますねえ。僕の写真の中ではかなり異質です。

前回、ジャイプールの文章の中で「ベナレスではかわいい子に出会わなかった。」と書きましたが、そのかわりに「かわいい男の子」には出会いました。

この子なんか「もてそう」ですよね。

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日本人はベナレスが好きで、インドへ行ったという人にルートを訊くと必ずベナレスがはいっていたりします。
なぜかというと、ここはヒンドゥー教・仏教の聖地なんですね。街の郊外には、釈迦が初めて説法を行ったサールナート(鹿野苑)があって、ひとりで行ってみました。
でも、ストゥーパと呼ばれるでっかい塔と建物跡があるだけで、釈迦にそれほど関心があったわけでもなかった僕は、とりあえず人気のない遺跡を一通り廻って外に出て、タクシーで、泊まっている「ゴータマホテル」まで帰ったのでした。

仏教の開祖:釈迦の本名が「ゴータマ・シッダールタ」なので「ゴータマホテル」。分かりやすい名前です。

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お話変わって・・・

20数年前のある日、カンテの社員達が集まってミーティングをしていた時の事。当時バイトの中村君が出していたケーキにもっといい名前を付けて再デビューさせようという話題に移り、ひとりずつどんな名前がいいかを話していて、井上さんが「ゴータマという言葉をつけたらどう?」ということになり、そのケーキがチョコを使っていたので「ショコラ」という名前と合体させて「ゴータマ・ショコラ」ができたのでした。

ところで、その初代「ゴータマ・ショコラ」とはどんなものだったのか、電話で広島の「ピンカートンズ・スーク」店主の中村君に(先ほど)訊いてみました。

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「当時、今まで出してたパイ生地のケーキに飽きてきて、厨房のスタッフ全員に新作のケーキを作るように井上さんに言われてて、僕も何種類か作ったわけだけど、井上さんの口に合わないケーキはどんどん消えていって、結局最後に残ったのが『ゴータマ・ショコラ』だったというわけですね。」

当時のカンテの新聞を見ると「今月のケーキ:ゴータマ・ショコラ=ダイナミックなケーキ、新登場」とある。
何がダイナミックかというと、バットに入れて作ったゴータマをスプーンですくって皿に盛るという豪快なケーキだったのです。

「そのケーキのアイデアはどこから来たのかというと、心斎橋にあったイタリアンレストランへ行った時、食後のデザートにでてきたのがティラミスなんです。当時、そんなケーキ食べた事もなかったんですがおいしかった。
その食感をカンテで再現したくてレシピを探したんだけどどこにもなかった。というか、まだ日本には、材料であるマスカルポーネのクリームチーズなんて一般には輸入されてなくて、まだティラミス自体が認知されてなかったんです。
そこでどうしたかというと、その時の食感だけを頼りに、当時カンテにあったホーローのバットに、シフォンケーキに使うような(チョコ)スポンジを下に敷いてシロップを浸し、カスタードクリーム、スポンジ、チョコクリームと重ねて、上にココアをかけて完成させたわけです。で、井上さんはこれが気に入ったし、お客さんにも好評だったので『定番にしよう』となったわけです。」(談:中村)

というわけで出来たゴータマなんですが、スプーンで取り分ける際に個人差があって、一定の大きさにならずお客さんに不公平だということで、最初はすごく柔らかかったゴータマも包丁でカット出来るぐらいの硬さが必要になったのと、さらに、中村君が広島でお店を始めるのでカンテを辞める事になり、今のケーキの主任である安田君にバトンタッチされ、現在の『ゴータマ・ショコラ』になったのでした。

ちなみに、当時のケーキのラインナップを御紹介しましょう。

チーズパイ、アップルパイ、バナナケーキ、チョコレートケーキ、レアチーズケーキ、おいしいポテト。

こんなに少なかったんですね。

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さて、話を戻しますが、

広いガートをウロウロしていると、何をしているのか知らないけど、男の子の集団に出くわして、カメラを向けるとみんな近寄って来ました。

この子はこぎれいでさっぱりしてますよね。パンツもシャツも汚れてないし、布の掛け方もさまになってる。僕の考えてたインド人像とはちょっとかけ離れているくらいおしゃれ。
ちなみに、この布はカンテでも売ってました。<インドの手拭い>とか書いてあったけど、こういう使い方もあるんだなあと感心します。

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他の連中も「僕を撮影しろ」と言わんばかりにポーズをつけてくる。別に僕に何かを売ろうとしていたわけでもないし、何かを訊きたいわけでもなかったみたい。ただ、自分をかっこ良くみせたい、それだけのように思えました。真ん中の子はルンギー(腰巻き)をしてますね。肩にかけてるのはインドのふんどしかな?井上さんがインドから似たようなものを持って帰ってたのを覚えています。水泳でもしてたんでしょうね。左の子も考えようによっては、なかなかにおしゃれさんです。

しかし、一番手前の子は浮いてますね?
合成みたいに見えるぞ。







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