紅茶の講座 10


同じ葉から作ってなぜ緑茶と紅茶になる?

その昔(1980年代中頃)、僕はカンテでお茶の仕事と服の仕事を半々に担当していたことがあり、お茶の販売や卸の作業の傍ら、服の情報を得るために女性週刊誌(および月刊誌)にも目を通していた時期がありました。

ある日、ウチの奥さんが買ってきた雑誌「アン・アン」をパラパラとめくっていたら「生活を科学する」というページに「同じ葉から作ってなぜ緑茶と紅茶になる?」という(アンアンにしては堅い)記事が載っていました。当時、カンテのチラシ作りの担当もしていた僕は、その記事を引用してコラムを書いたことがあります。

その「アンアン」の記事は今もスクラップブックに保存してあり、時々読み返しては自分がちゃんとお茶のことを理解しているかどうか確かめたりしています。なぜなら、お茶のワークショップをする時の「つかみ」に使えるから。(笑)
まあ、それぐらい「お茶の基本中の基本」が書かれてある文章なので、「カンバラ・マガジン」の読者のために全文を転載してみます。もう30年も前の文章だから、記事の作者も複製を許してくれるでしょう。


緑茶の製法は、摘んだ葉をまず蒸す。そして、何段階にも揉み、乾燥させて製品にする。

紅茶の場合は、葉をはじめに適当な通風のあるところに十数時間置く。
これを「委凋(いちょう)」といい、酵素を活性化させるためのもの。
委凋で柔らかくなった葉をよく揉んだあと、発酵させる。
この発酵は、葉の成分に葉自体の酵素が働いておこる作用で、一定以上の温度と湿度の場所に置いておくと、どんな茶葉も発酵してしまう。

緑茶を作るとき、はじめに蒸すのは、酵素を不活性化し、働かなくするためだ。

つまり、発酵させるか、させないかが、紅茶と緑茶の違いになる。

不発酵茶の緑茶は、生葉の成分をほとんど失うことがなく、ビタミンCの含有量も多いが、逆に発酵させることによって成分が変化して、身体に有効な成分となることもある。

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”手揉みの味”などと言われるように、「揉む」作業は緑茶の製造過程で大切な役割を果たす。紅茶を作る際にも「揉然(じゅうねん)」が行われる。これは主に葉の細胞を壊す作業だが、緑茶の場合は「お茶の出を良くするため」で、紅茶の場合は「発酵を促進するため」になされる。

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同じ葉から作られるといっても、緑茶には中国種が適し、苦味の多いインド種は紅茶向きである。

嗜好品としてもっともポピュラーなお茶に関する疑問を、女子栄養大学の吉田先生におききしました。


Question:

お茶の旨味は何から生まれるの?

「お茶には10種類のアミノ酸が含まれていますが、旨味の成分はグルタミン酸とテアニンが主なものです。特にテアニンは、お茶の葉だけから採れる物質で、緑茶独特の旨味を出す成分と考えられています。
若い葉や、ある時期葉に覆いをして日光を遮った葉に多く蓄積されるので、そうやって作った玉露や上質の煎茶に多く含まれるわけです。」

グルタミン酸は化学調味料の主要物質。高級なお茶の味がなんとなくそれに似ているのも頷ける。

「苦味もお茶の味の大切な要素です。苦味を作る物質として、カテキンとタンニンがあり、カテキンは渋みが弱く、あとに甘みが残ります。渋みの強いタンニンは、柿の渋みと同じものでいろんな食品に含まれていますが、特にお茶の中に多く含まれているんです。

苦味が全くないと、お茶のコクはでません。ほどほどにあることが、味の重要な要素なのです。例えば、野菜の灰汁(アク)もおなじでしょ。灰汁抜きしすぎると、旨味がなくなってしまいますからね。」

味の成分とはいえないが、香りもお茶を味わうためには欠かせない要素だ。

「青葉アルデヒドや青葉アルコールと呼ばれる物質が新茶の香りを作りだしているのです。」

紅茶の香気成分は、緑茶に比べアルコールが多くなっている。

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Question:

お茶によって淹れる温度に差があるのはなぜ?

ほとんどの紅茶は熱湯を勢いよく注ぎ、いっぺんに葉を開かせるような淹れ方をするが、緑茶の場合、種類によってお湯の温度に差があるのは常識だ。玉露なら60℃〜70℃、煎茶が80℃〜90℃、番茶やほうじ茶は熱湯が良いことになっている。

これは、旨味の成分であるアミノ酸と、苦味の成分タンニンの溶ける温度に差があるためだ。約60℃で溶けるアミノ酸に対し、タンニンは80℃にならないと溶けない。

「玉露や上質の煎茶にはグルタミン酸が多く含まれると同時にタンニンも多いので、旨味を充分に出しながら、苦味をなるべく抑えるには、60℃〜70℃が用途いうわけですね。」

番茶や下級煎茶は、旨味、苦味の両成分とも少ないため、熱湯で淹れ、主にのどごしのさわやかさが重視される。しかし、安いお茶でも、適当とされる温度より少しぬるめのお湯で淹れることにより、やや上質のお茶の味に近くなると言われる。また、普通に玉露をいれた後、熱湯で苦味を味わい、さらに出しガラを焙じて、ほうじ茶として飲む「一煎三味」とよばれる味わい方もある。

Question:

飲むと眠れなくなる人と平気な人がいるのは?

お茶の葉にはカフェインが含まれ、神経中枢を興奮させ、疲労や眠気を減じる作用がある。

「体質によって、その作用を敏感に受ける人、受けにくい人がいるようですね。それに若い時は眠れたけど、歳をとると眠れなくなる人がいるように、老人や機能の弱っている人や赤ん坊は影響を受けやすいんです。

番茶などの安いお茶には少なく、上質のお茶に多く含まれます。ほうじ茶なら夜飲んでも寝られる人がいますが、熱を加えて焙じてもカフェインは分解しないので、二番茶や三番茶の堅い葉や茎を使う、という原料の問題でしょうね。」


以上が、記事の全文です。

今考えると、「アン・アン」にこんな専門的なことが書かれてあるなんてすごく不思議な気がしますが、昔は単なるお茶の雑学でも、こんなに深〜い「なるほど!」的な事柄をみんな知りたがっていたんだなとも思います。
それに、この文章を書いた人の理解力もすごい!と思いますね。半端な編集者なら、どっか勘違いして適当な文章を書いたりするんですが、ちゃんと僕にも納得できるコラムになっている。

ただ、これ、文章だけ読むとすごく難しそうに思うけど、言葉を変えて僕の身振り手振りを交えながら聞くと「なんだ、そんなことか。」と理解しやすくなりますよ。

と、僕のワークショップの宣伝をしてみたりして。

(神原)




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